
ものづくりの世界では、完成直前に行われる処理のことを「仕上げ(finish)」と呼びます。
でも実際は「最後にちょっと整えるだけ」ではなく、仕上げは“作品の印象を決める決定打” と言ってもいいほど重要な工程です。
今回は、仕上げの種類や効果について、デザインの目線も交えながら丁寧にまとめてみました。
仕上げとは?
仕上げとは、物の表面に施される処理全般 のことを指します。
ここには見た目だけでなく、手触り、耐久性、汚れやすさ、経年変化の仕方までが含まれています。
・毎日触れるもの
・手に持つもの
・光が当たる部分
・傷つきやすい部分
こういった“直接目や手が触れるところ”に対して、最適な状態を整えてあげるのが仕上げの役割です。
仕上げは単に「綺麗にする」のではなく、
用途に合わせて性能・質感・美しさを整える“デザインの最終回答”とも言えます。
仕上げ方法の種類
仕上げには本当にたくさんの種類がありますが、代表的なものを目的ごとに整理してまとめてみます。
① 表面に層を乗せる:塗装・コーティング系
塗装は最も身近な仕上げのひとつです。
色を加えるだけでなく、
・紫外線から守る
・さびを防ぐ
・表面を固くする
・汚れを落としやすくする
といった“保護膜”の役割も果たします。
例としては
・ウレタン塗装
・ラッカー塗装
・パウダーコーティング
・ガラスコーティング
などがあり、それぞれ光沢・耐久性・厚さが異なります。
「見た目の美しさ」と「耐久性」を同時に満たせるところが魅力ですね。
② 表面そのものを変える:研磨・仕上げ加工
研磨は、表面を削って滑らかにしたり、逆に模様をつけたりする方法です。
・鏡のように光を反射させる“鏡面研磨”
・細かな筋模様をつけて落ち着いた印象にする“ヘアライン加工”
・ツヤを抑えて“しっとり感”を出すサンドブラスト
など、印象がガラッと変わります。
金属製品なら、磨き方ひとつで“高級感 → 工業的 → 無骨”まで雰囲気を操れるのが面白いところです。
③ 表面に凹凸をつける:テクスチャ加工
素材の魅力を引き出す方法のひとつが、表面に意図的な凹凸をつけること。
例えば、革の型押し模様(エンボス)やプラスチックの梨地仕上げ、木材の浮造り加工など。
凹凸は、
・手触りの心地よさ
・滑りにくさ
・指紋が目立ちにくくなる機能
などにも効果があります。
触覚に訴える表現ができるので、僕も工業デザインをしていたときは必ず検討していました。
④ 化学的に性質を変える:エッチング・酸化・熱処理
金属の仕上げでは、薬品や電気・熱を使って性質を変える方法もあります。
・アルマイト(アルミの酸化皮膜処理)
・エッチング(酸で表面を溶かして模様をつける)
・焼き入れ(硬度を高める熱処理)
・黒染め処理(光の反射を抑える)
これらは、見た目だけでなく、
硬さ・防錆・耐熱・耐摩耗など、性能そのものに直結する仕上げです。
特にアルミ製品は、アルマイトによって“さらっとした金属らしい手触り”と“美しい発色”を両立します。
MacBookやiPhoneもこの処理ですね。
仕上げがもたらす効果
仕上げは、見た目のためだけにあるわけではありません。
実は「その製品の性格を決める」のも仕上げの役割です。
ここでは、仕上げが与える主な効果をいくつかピックアップします。
① 見た目の印象を決定する
同じ形でも、
・ツヤがあるのか
・マットなのか
・きらきら反射するのか
・しっとり落ち着いているのか
によって、印象はまったく変わります。
仕上げは「質感のデザイン」そのもの。
形状+質感の組み合わせで“高見え/安っぽさ”が決まります。
② 手触りと使用感をコントロールできる
滑りやすいか、持ちやすいか、傷つきやすいか。
そういった使い心地は、実は仕上げの選択によってほぼ決まります。
スマホの背面のマット感や高級家具の手触り、
キッチン用品の洗いやすさ
すべて仕上げの違いです。
③ 経年変化をどう迎えるかを選べる
仕上げによって、「劣化するスピード」ではなく、
“どんなふうに歳をとっていくか” を選ぶことができます。
革であれば光沢が深くな離ますし、
金属なら程よくくすみ、
木も柔らかい色に変わるんです。
経年変化を味として楽しむか、つねに新品のように保つかも、仕上げ次第です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
仕上げって“最後のひと手間”ではなく、
その製品の見た目も手触りも寿命も左右する、とても奥深い世界です。
形を考えるときも、その製品の未来まで想像して、
「どんな仕上げを選ぶべきか?」
を一緒に考えられるようになりたいですね。
僕自身、工業デザインをしていた頃は、形と同じくらい仕上げに頭を悩ませていました。
でも、だからこそ仕上げはとても面白くて、製品の“性格づけ”ができる大事な工程なんだと思います。
今回はこの辺で!
最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。




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