
今回は、「シブい」についてまとめてみたいと思います。
「シブい」といっても、
渋柿を食べた時の「うっ」とくる感覚ではなくて、かっこいいのニュアンスのある形容詞の方です。
普段の会話でよく使う言葉ですが、
よく考えると“何がどうなるとシブいのか”って、なかなか説明しづらいんですよね。
若い頃にはピンとこなかったのに、大人になるほどじわっと魅力を感じてしまう。
そんな「シブさ」の正体を探ってみます。
シブいとは何か
辞書では
「落ち着いていて味わい深い」「地味だが上品で粋」といった説明がされています。
噛み砕くとポイントは3つあると感じています。
- 派手でない
- 時間の重みを感じる
- 抑制された中に美しさがある
つまりシブさは、
「控えめだけど、深い魅力がある状態」
と言えるのではないでしょうか。
色から見る“シブい”
色は渋さを語るうえで欠かせません。
渋さに繋がる色についてまとめてみますね。
低彩度の温かい色
茶、カーキ、墨黒、焦げた赤…
自然の中にあるような“土・木・鉄”の色味は渋さを感じやすいです。
誰も暖色系で、彩度は低いという共通点があります。
自然や大地に関連する色だからか、どっしり構えた感じ、器の広い感じも受けますね。
派手さがなく、深い落ち着きを持っています。
彩度を抑えた補色の組み合わせ
渋さは色どうしの組み合わせによってもうまれると思います。
例えば、
・深緑 × 金
・赤茶 × 黒
・抹茶色 × 渋い紫
視覚的な主張は強くないけれど、並べると妙にしっくりくる。
こうした“控えめな相性の良さ”もシブさを生みます。
素材から見る“シブい”
渋さは素材の質感とも強く関係しています。
経年変化がある素材
・革
・真鍮
・鉄
・木
新品より、時間を重ねた姿が魅力になるという特徴があります。
この“深まっていく美しさ”こそシブいの本質だと思います。
こうしたものは、時間の経過で変化はするけど、
それは、長い時間残り続ける強さがあるからこそのものです。
経年変化は、暗にその静かな強さを示しているとも言えるのではないでしょうか。
反射を抑えた質感
キラキラ、ギラギラとした光沢の強いものは派手に見えがちですが、
つや消しがされたものは、光が乱反射して主張が抑えられることで落ち着きや重厚感が出ます。
高級なカメラの黒がシブく見えるのは、この効果が大きいですね。
形から見る“シブい”
少し意外かもしれませんが、実は形にもシブさは現れます。
情報量の少ないフォルム
情報量が多くなると、余裕を感じる渋さとは逆方向に向かってしまいます。
線が多い=にぎやかさ
線が少ない=落ち着き
というように、シブいデザインは、線の数が少ないことが多いです。
余白を持っていて、余計な主張をしない。
何事も余裕があるとかっこいいですよね。
削ぎ落とされた機能美
装飾より機能が形に現れているものには渋さが宿ると感じます。
・かんなや金槌など、職人の道具
・ミリタリー用品
・金属製のライター
・古い車の内装
必要なものだけ残り、無駄がない。
この合理的で潔い感じが
達人感というか、大人っぽい渋さにつながるんですよね。
過去の技術によって作られている
年月を感じさせるという意味では、
現在では新しいものに置き換えられた、過去の技術や製法で作られたものにも渋さを感じると思います。
あえてそれを選択したという意思や、背景のストーリーが感じられるのも魅力を感じる一因かもしれません。
心理的に見る“シブい”
ここまで渋さの特徴などをあげてきましたが、
僕たちはなぜ渋さに惹かれるか
についてまとめてみたいと思います。
① 時間の重み=安心感
切り株の年輪のように、ゆるやかな時間を感じるものには安心感が生まれます。
長く存在してきたものは、“信頼できる”と本能的に感じるためです。
長く存在してきたものは、長く存在できた理由がありますからね。
あれこれ説明をしなくとも、存在することそのものがすべての証明。
② 押し付けない美=大人の余裕
派手さよりも深みを選ぶという姿勢が、
大人の余裕や知性の象徴に見えるのだと思います。
これは”品”にも通ずる点かもしれませんね。
③ “わかる人にはわかる”美学
渋さは説明しづらかったり、主張と相反する性質を持っている分、大衆からの広い人気を得るようなことは少ないかと思います。
わかるひとにだけわかるものだからこそ、理解した瞬間にぐっと魅了されるような感覚があります。
制作・デザインで「渋さ」を出すには?
最後に、実用的な話。
実際に制作をする時、渋さを出すにはどうすればいいか、まとめてみますね。
① 彩度を落として、明度差で勝負する
渋いデザインは、色の鮮やかさではなく明暗のコントラストで印象を作りましょう。
②丈夫な素材感を出す
しっかりとした耐久性のある素材の質感を出すと、そうでないものに比べて渋さがでますよ。
③マット・ラフ・経年表現を使う
つやを抑えたり、表面に微細な凹凸を残したりすると、
一気に“渋い質感”になります。
④情報を盛りすぎない
不必要な線、装飾、色数を減らして「余白」を作りましょう。
合理的か、潔いかをチェックしながら制作しましょう。
④ 金属や革をワンポイントで
真鍮やレザーなど、経年変化する素材を少しだけ加えると、
アクセントとして渋さが深まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
渋さは“多くを語らない大人の魅力”の集合体だと思います。
- 彩度が低く落ち着いている
- 経年変化が似合う
- 余白や抑制に美しさがある
- 時間を感じさせる
- 派手さではなく深みで勝負している
若い頃には気づきにくいけれど、
大人になるほど心に沁みる、そんな魅力です。
これからデザインやもの選びをするとき、
「これは渋いかな?」と考えてみると、
また違った楽しさがあるかもしれません。
今日はこの辺で!
最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。
【参考】シブさに関係するデザイン用語まとめ
| 用語 | 意味 | 関連内容 |
|---|---|---|
| ローキー(Low-key) | 明度の低い落ち着いた色調 | シブい色使い |
| マット(艶消し) | 反射を抑えた質感 | 渋い質感の定番 |
| 経年変化(エイジング) | 時間による素材の変化 | 革・金属・木 |
| クラフト感 | 手作りの“粗さ”が美になる要素 | 素朴さ・深み |
| 侘び寂び(わびさび) | 不完全の中の美しさ・静けさ | 日本的な渋さ |
| ミニマリズム | 不要な要素を削ぎ落とす思想 | 渋いデザインの土台 |
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