
ものづくりに向き合うと、必ずぶつかるのが“材料”です。
世の中に溢れる物は、材料を切ったり、削ったり、磨いたり、溶かして固めたりして作られたのです。
私たちがものを作るとき、材料についてはどのように考えればいいか、整理していきます。
材料について
何かをつくるとき、形の前にまず「どんな素材でつくるか」を決めることが必要です。
そして一度決めた材料は、
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つくれる形
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手触り
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印象
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重さ
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耐久性
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値段
など、ほとんどすべての性質を左右します。
つまり、材料選びはデザインそのものを決めると言ってもいいくらい重要です。
ここからは、身近で代表的な材料を整理し、それぞれの特徴や魅力を見ていきたいと思います。
主な材料とその特徴
① 木(Wood)
木は人類の歴史とともに使われ続けてきた材料です。
温かみがあり、手触りがやさしく、自然との親和性も高いのが魅力です。
木には大きく 針葉樹(柔らかい) と 広葉樹(硬い) があり、
種類によって重さ・強度・しなり・光沢・耐水性がかなり違います。
木の大きな種類としては、針葉樹と広葉樹があります。
広葉樹は材質として硬いですが、針葉樹は柔らかく、加工がしやすいという特徴があります。
さらに、細かい種類ごとに曲げに対する強度や重さ、弾力性、光沢、耐水性などのパラメータが変わってきます。
生き物として何百年も生きるほどですので、自然環境との相性も良く、雨風にも強いです。特有のしなやかさも生き物ならではでしょうか。
100年以上も前の歴史的な建物が残っているのは木の強さと、その特性を熟知した職人さんのおかげです。
木の良いところ
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自然の模様が美しく、同じものが一つとして無い
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手で触れたときの温度感がやわらかい
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鋸やカンナで加工しやすい
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経年変化で味が出る
注意したいところ
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水に弱い種類も多い
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反りや割れが起きることがある
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育つまで長い時間が必要
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伐採による環境負荷
最近では、廃材を再利用した MDFやOSB といった木質ボードも増えてきました。
自然素材を大切にしたい場合の選択肢としておすすめです。
② 紙(Paper)
紙は“薄くて軽くて加工しやすい”という、他にはない特徴を持っています。
紙の良いところ
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切る・折る・貼るが自由で扱いやすい
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表面にさまざまな質感が作れる
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印刷との相性が抜群
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リサイクルがしやすい
注意したいところ
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水に弱い
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曲げに弱い
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紫外線で劣化しやすい(黄ばみなど)
デザインの世界では、紙の「手触り」「厚み」「白さ」の違いを使い分けるだけで印象が大きく変わります。
③ 布(Fabric)
布は“柔らかく形が変わる”という、固体材料にはない魅力があります。
布の良いところ
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動きに合わせて形が変わる
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種類が非常に多い(綿・麻・ウール・合成繊維…)
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色を染めやすい
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触感が豊か
注意したいところ
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水や摩耗に弱いものもある
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伸びる方向が一定で作りによって癖が出る
ファッションだけでなく、家具やバッグなどにも欠かせない材料です。
④ 革(Leather)
革は耐久性と質感のバランスが独特で、“使い込むほど美しくなる”素材の代表です。
革の良いところ
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とても丈夫
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表面のシワや質感が唯一無二
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経年変化が美しい(濃くなる・艶が出る)
注意したいところ
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水に弱い(シミや硬化)
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動物素材のためコストが高め
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大きさや形が一定でない
高級感を出したいときや、 “育つ素材” を使いたいときにぴったりです。
⑤ 金属(Metal)
金属は、強度・精度・耐久性に優れた材料です。重厚感がある一方、加工によっては繊細な表現も可能です。
金属の良いところ
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高い強度
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表面を磨くと美しい光沢が出る
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熱や衝撃に強い
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加工方法が多い(削る・曲げる・溶かす…)
注意したいところ
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重い
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触れた瞬間冷たい
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種類によっては錆びる(鉄など)
ステンレス、アルミ、真鍮など、それぞれ個性がはっきりしています。
⑥ プラスチック(Plastic)
現代の生活を支えているのがプラスチックです。
軽く、加工の自由度が非常に高いのが最大の強みです。
プラスチックの良いところ
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とにかく形の自由度が高い
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色を自在に作れる
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軽い
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大量生産に向いている
注意したいところ
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熱に弱い種類も多い
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経年劣化が起きる(黄ばみ・ひび割れ)
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環境への影響が大きい(ただし改善も進んでいる)
近年は生分解性プラスチックや再生素材も増えており、選択肢が広がっています。
材料を選ぶときに考えたいこと
材料を選ぶときは、見た目だけでなく、次のような視点があると決めやすくなります。
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どんな印象を与えたいか(暖かい/クール/軽い/重厚)
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どれくらいの強度や耐久性が必要か
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触ったとき、どんな質感が理想か
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重さはどれくらい許容できるか
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環境負荷はどうか
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コストはどの範囲か
材料は“性格”のようなものなので、
目的やコンセプトに合っているかどうかはとても大切です。
まとめ
材料を理解すると、ものの見え方が一気に変わります。
同じ形でも、木でつくるか、金属でつくるか、プラスチックでつくるかで、まったく別物になります。
これから作品をつくるときにも、日常のものを見るときにも、
「これはなぜこの材料で作られているんだろう?」
と考えてみると、世界の“ものの理由”がもっと面白く感じられるはずです。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう!
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【参考】材料に関係する専門用語
| 用語 | 意味 | 関係する材料の考え方 |
|---|---|---|
| ヤング率(弾性率) | 曲げにくさ・硬さの指標 | 木・金属・プラの“しなり”の違いを説明 |
| 比重 | 材料の重さを表す値 | 木は軽く、金属は重い理由 |
| 熱伝導率 | 温まりやすさ・冷えやすさ | 金属が“冷たく感じる”理由 |
| 耐候性 | 雨・紫外線への強さ | 木・紙・布の劣化との関連 |
| 耐摩耗性 | こすれへの強さ | 革や金属の耐久性を左右 |
| 吸湿性 | 湿気を吸う性質 | 布・紙・木の扱いやすさに影響 |
| 成形性 | 形を作りやすいかどうか | プラスチックの最大の強み |
| リサイクラビリティ | 再利用のしやすさ | 環境素材の選び方と直結 |
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