今回は「形」について。
中でも「丸」と「角」に注目してみたいと思います。
丸い形と角ばった形、どちらにもそれぞれの良さがあります。
でも僕たちは、なぜ“丸いものにやさしさ”を感じ、
“角のあるものに強さ”を感じるのでしょうか。
直感的にわかっていることほど、深く考えると面白い。
今回はそんな「丸と角」の奥にある心理や美しさを掘り下げてみたいと思います。
丸と角の印象の違い
形には、それだけで感情を動かす力があります。
丸は「やさしい」「柔らかい」「親しみやすい」印象を与え、
角は「強い」「鋭い」「真面目」「緊張感のある」印象を与えます。
例えば、赤ちゃんの頬や雲の形、丸いフォントや家具の角の取れたデザインなど。
僕たちは、丸いものに触れると無意識に安心します。
一方で、角があるものは緊張感を生みます。
ナイフや建物の角、カクカクしたフォントなどは、
「ぶつかったら痛い」「正確で整っている」といった印象を持たせます。
形の違いだけで、こんなにも感情が変わるんですね。
丸がもたらす心理的効果
丸い形がやさしく感じるのは、僕たちの進化とも関係していると言われています。
人間は生まれたときから「丸いもの=安全」という経験を重ねています。
たとえば母親の顔、目や頬の輪郭、木の実、果物…
自然界の「生」を象徴するものの多くは丸い形をしています。
また、丸は“連続的”で“終わりがない形”です。
角がないため、目の動きが止まらずスムーズに流れます。
その視覚的な滑らかさが、やすらぎや安心感を感じさせるのだと思います。
心理学でも、丸い形は「接近したい」という感情を引き出す傾向があるといわれています。
だからこそ、ロゴやキャラクターに丸みをもたせると“親しみやすく”見えるのです。
角がもたらす心理的効果
角のある形には、明確な方向性と秩序があります。
“どこかへ向かう”“動きを止める”“枠をつくる”といった印象を与えるのが角です。
そのため、ビジネスや建築など「誠実さ」「精密さ」「強さ」を表したい場面で多く使われます。
正方形のロゴや、角ばったパッケージ、四角い画面。
そこには「安定」や「信頼」を象徴するメッセージが含まれています。
ただし、角は強さの反面、“冷たさ”や“威圧感”も生みます。
受け手がどう感じるかは、文脈や組み合わせで大きく変わるんです。
丸と角のバランスで生まれる美しさ
現実のデザインでは、丸と角の“バランス”こそが重要です。
丸ばかりだと締まりがなく、角ばかりだと冷たくなります。
たとえばApple製品。
ものによって、エッジはあるのに全体はしっとりやわらかく、手にしたときに“痛くない”。
角を「取る」のではなく、「整える」。
この絶妙なラインの取り方が、プロダクトの印象を決めているのです。
シンプルな形ほど、丸と角のリズムが問われると僕は思います。
丸があるから角が生き、角があるから丸が美しく見える。
この対比の中に、デザインの奥深さがあるんじゃないでしょうか。
丸と角の選び方
形をデザインに使うとき、
まず「どんな感情を伝えたいか」を考えると選びやすいです。
| 伝えたい印象 | 形の選び方 |
|---|---|
| やさしさ・親しみ・安心感 | 丸みを多く取り入れる(曲線・楕円など) |
| 誠実さ・信頼・秩序 | 角を強調した構成(正方形・直線など) |
| ダイナミックさ・スピード感 | 丸と角を組み合わせてコントラストを作る |
| 静けさ・調和 | 丸みと角を中間的に整えたフォルムにする |
“どちらが正しい”ではなく、
「どんな関係をつくるか」で見え方が変わります。
まとめ
丸と角は、ただの形ではありません。
確かに感情を呼び起こす、形の隠し味のようなものだと思います。
どちらか一方に偏るのではなく、
そのプロダクトにとっての「ちょうどよさ」「気持ちよさ」を見つけること。
それが、見る人を惹きつけるデザインの鍵だと思います。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。
【参考】形と心理に関する専門用語
| 用語 | 意味 | 関連箇所 |
|---|---|---|
| ゲシュタルト原則 | 形やパターンを全体として知覚する心理の傾向 | 丸の一体感・流れの説明 |
| プラグナンツの法則 | 人は最もシンプルで安定した形にまとめて認識する | 丸に安心感を感じる理由 |
| アフォーダンス | 形が自然に「どう使うか」を示す性質 | 角のある形が“枠”や“方向”を感じさせる点 |
| 緊張と解放
(テンション&リリース) |
視覚的バランスをつくる対比の原理 | 丸と角の組み合わせによる調和 |
| エッジ処理
(Chamfer/Round) |
角を取る加工の種類 | Appleなどの滑らかなデザイン例 |



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