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「陰影」とは何か|光と影がつくる立体感と感情のデザイン

この記事は約5分で読めます。

こんにちは、アツシです。
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陰影とは何か

日常で「陰影」という言葉を意識することは、あまりないかもしれません。

でも、絵を描いたり、デザインを作ったりするとき、陰影は一気に主役になります。

陰影とは、光がものに当たることで生まれる明るい部分()と暗い部分()の差。



一般的には、

  • 物体そのものの暗い部分を「陰」

  • 物体が地面などに落とす暗みを「影」

    と呼び、それらを合わせて「陰影」と言います。

たったそれだけの違いのようで、実はこのコントラストが、形の存在を決定づけているのです。

陰影がもたらすもの

① 平面に“空間”を生む

たとえば、紙に円を描いたとします。

それだけでは単なる図形。存在感も重さもありません。

しかし、円の右下に少しだけ影を落とすと、それは球体に変わります。

さらに、下に落ちる影を描くと、「地面の上にある」ことまで伝わります。

陰影があるだけで、二次元は三次元へ、

“線”が“存在”に変わる。

まさに、光と影こそが形の証です。

② 物の性質を伝える

陰影は立体感だけでなく、質感や素材感も伝えます。

たとえば、金属は強いハイライトを持ち、極端に明るいところと極端に暗いところが繰り返されたりしますし、

布や肌はやわらかく光をにじませます。

同じ形でも、影の境界の柔らかさや反射の量が違うだけで、

見る人は「冷たい」「温かい」「軽い」「重い」と感じます。

つまり、陰影は“触感のない触覚”なのです。

③ 感情を生む

光が強いほど影も濃くなる。

だからこそ、陰影にはドラマがあります。

顔の片側にだけ光が当たると、人は「静けさ」や「思索」を感じ、

逆に光が全体を包むと「開放感」や「希望」を感じると言われています。

陰影は、形だけでなく感情も描き出します。



映画、写真、建築でも、陰影は陰ながら強力な存在力を放っているんです。

光と陰影の関係

陰影を理解するには、光の性質を知ることが欠かせません。

光とそれによって生まれる印象についてまとめてみます。

光の種類 特徴 生まれる印象
直射光 強いハイライトとくっきりした影 力強い・ドラマチック
拡散光(曇り・反射) やわらかい陰影でコントラストが少ない 穏やか・ナチュラル
逆光 輪郭が光る・シルエットになる 神秘的・印象的
サイド光 形の凹凸を際立たせる 立体的・深みのある表現

光の方向と強さを変えるだけで、同じ形がまったく違って見えます。



だからこそ、デッサンや写真ではまず「どこから光を入れるか」が構図よりも重要とも言われます。

陰影とデザインの関係

陰影の考え方は、美術に限らずUI(ユーザーインターフェース:サイトやアプリの特に操作部)やプロダクトデザインにも通じます。

例えば、ボタンに落とされたわずかな影。



カードUIの下にある薄いシャドウ。



それらがあるだけで、画面上の情報に“層”と“触覚”が生まれます。

光を身につけたインターフェース設計ですね。

Appleの“フラットデザインからニューモーフィズムへの移行”も、陰影の再定義によるものでした。

「リアルに見せるため」ではなく、「触れる感覚を感じさせるため」。

陰影は、見た目以上に感情の触媒として働いているのです。

陰影を描く・捉えるためのポイント

最後に、実践編ということで、陰影をうまく扱う方法についてまとめます。

 

  1. 光源を一つに決める

     影の向きを統一するだけで、作品全体が安定します。

  2. 境界を意識する

     影の“切れ目”が硬いか柔らかいかで、素材の印象が大きく変わります。

  3. 明暗比で焦点をつくる

     明るい部分と暗い部分の差(コントラスト)を強めるほど、視線が引き寄せられます。

  4. “見えない部分”を描く

     完全な黒ではなく、反射光や空気の明るさを残すと、奥行きとリアリティが増します。

まとめ

陰影は、形を「存在」として浮かび上がらせる、光と並ぶ重要な要素です。



ただの明暗ではなく、感情・空気・質感までも語ることができます。

デッサンでもデザインでも、陰影を理解すれば“見えないもの”が見えてきます。

形は光で描かれ、影で語られると言えるのではないでしょうか。

面白いと思った方はぜひ、外の景色の中の陰影に意識を向けてみてください。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

またお会いしましょう。


【参考】陰影・光に関する専門用語

用語 意味 関連する内容
明暗(Chiaroscuro) 光と影の対比によって立体感を生み出す技法。レオナルド・ダ・ヴィンチなどが多用。 陰影表現の基本原理
コントラスト 明るさの差 明暗差を強調することで焦点と印象をつくる
ハイライト 最も明るい部分 光の方向・素材感を示す
コアシャドウ 物体に最も濃く出る影 立体感を決定づける
リフレクション(反射光) 周囲の光が影の中に反射して入る部分 リアルな陰影をつくる
アンビエントライト 環境全体を照らす柔らかい光 雰囲気・空気感を与える
ルミナンス 物体の輝度(明るさの度合い) 光の物理的要素の指標
トーン(Value) 明るさの階調 明暗のバランス設計の基礎

アツシ

理工系の学部を卒業し、メーカーの生産技術職を経てデザインの道に進み、工業デザインとUI・UXデザインを経験しました。僕と同じような人がデザイナーやクリエイターを目指したり制作活動をすることの力になりたいと思っています。

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