
突然ですが、みなさんはデッサンをご存知ですか?
美術の一環で、絵を描くことだとは知っていても、何のためにすることなのかわからない人や、難しそうに感じ抵抗がある人もいるかもしれません。
僕も通っているアートスクールで定期的にデッサンやクロッキー(より短い時間で書き上げるデッサン)をする機会があるのですが、ついつい無心になれるところも楽しいです。
いろんな発見もあり、世界の見方が変わりますよ。
というわけで今回は、僕と一緒にデッサンについて学んでいただけませんか?
よろしくお願いします!
デッサンについて
デッサンは、対象物をじっくり観察して、紙と鉛筆を使用して描き起こすことです。
美術的な取り組みなので、描くこと、描く力が全てのように思いがちですが、
デッサンのポイントはよく観察することなんです。
ここでものの形や質感、それからものが置いてある空間やそこでの存在感など、さまざまな情報を見て取ります。
そして、観察したものを平面に再現していくことで、形をとらえる力や立体感、質感を表現する力、光や陰影を表現する力などを身につけることができます。
普段はただ見えているだけのものについて、きちんと観察して理解して再現できるようになることで、デッサン以外の制作でも表現力がグンと上がるんです。
これは、例えばUIなど、デザインの仕事にも活かせると僕は思います。
デッサンの道具
それでは、実際にデッサンではどのような道具を使うのかをご紹介します。
木炭
木炭は”描く”ための道具で、その名の通り木の枝を隅にしたもの。
摩擦によって粉を紙に擦り付けることで描きます。
空間から量感、質感、細部までの幅広い表現が可能です。
日本で使われている代表的なものは伊研のNo.360、No.200だそうです。
ヤナギの木のものは特に柔らかく濃いので個人的には気に入っています。
芯抜き
天然の枝を焼いたものである木炭の中心には、水の通り道である道管があります。
道管は発色や定着が悪いため、このワイヤーを通して内側を削り、その後、ブラシを通すらしいです。
とは言っても、僕はまだ使用したことがありません。
鉛筆
身近な鉛筆も、木炭の代わりに使用できます。
鉛筆の硬さについては、10H〜Hが硬め、2B〜9Bが軟らかめ、F・HB・Bが中間の硬さです。
硬いものは薄く、軟らかいものは濃く描くことができます。
4H〜4Bまでの鉛筆を準備すると良いそうです。
練りゴム
消す=白で描くことに使う練り消しのようなもので、扱いやすいよう適度にちぎってこねて、尖らせたりして使いますね。
押し付けて模様をつけたり、転がしてトーンを調整することにも役立ちます。
消す道具の中ではかなり強く消す=白を描くもので、質感ごと消す感じです。
ガーゼ
主に傷を覆うために使われるガーゼも、デッサンに使うことができます。
黒を消して白にするために使うのですが、消し心地としては、練りゴムよりも控えめで、ぼかしながら薄くするのが得意です。
赤ちゃんのために使うようなガーゼハンカチが適度に大きくて扱いやすいですね。
食パン
なんと、普段僕たちが口にする食パンも、消す道具として使うことができます。
消し心地としては、練りゴムよりも急でなく、粉感と言いますか質感を残しながらも黒を引き取ることができます。
この質感が残せるというのがありがたいんですよね。
ちなみに、高級な食パンよりは、お安い食パンの方がシンプルで使いやすい気がします。バターや油分などでベタついたりしてしまうと残念になってしまうかも。
擦筆(さっぴつ)
紙でできた特有の道具で、細かい部分を擦ってぼかしたり、鉛筆や木炭を馴染ませたりするために使います。
フィキサチーフ
木炭を支持体に定着させるために使う、スプレー缶に入った液体です。
接着剤(アクリル樹脂)をアルコールに溶かしたものとのことです。
木炭自体には、紙などの支持体にくっつく成分が含まれていないため、スプレーでこのフィキサチーフを吹きかけて上からコーティングします。
デッサンしたものに油絵の具などで色をつけるとき、これをしないと粉が伸びて広がって、下絵が崩れてしまいます。
デッサンのやりかた
それでは、実際にデッサンのやり方について簡単に紹介します。
0. 木炭を正しく持つ
木炭は、鉛筆のように持つのではなく、人差し指と親指で、これほどまでかというくらい寝かしてつまむように持つのが良いようです。
鉛筆のように持つと細い線しかかけませんが、こうして持つことで影の面を塗ったり、途中で太い線や細い線に切り替えることもやりやすいです。
デッサンのやり方
ここからが本題です。
デッサンは単なる「模写」ではなく、“空間を紙の上で再構築する作業”です。
以下の流れで進めると、より確かな形と空気を捉えられます。
1. 観察する
まずは、描く前にじっくりとモチーフを観察します。
・どんな形をしているか
・どこが明るく、どこが暗いか
・どんな素材で、どんな光を反射しているか
この「観察」こそがデッサンの8割。
描き出すのは、その観察の“記録”です。
2. あたりを取る
木炭や鉛筆を寝かせて、大まかな形と位置関係を軽く描きます。
この段階では正確さよりも全体のバランスが大事です。
縦横の中心線を入れて、傾きや位置を確認します。
3. 形をとる
輪郭をしっかり意識しながら、立体の構造を考えつつ線を重ねます。
線は“輪郭”ではなく、“面の境目”を意識して描くと自然になります。
ここでは、目で見た通りではなく、「形がどの方向に回り込んでいるか」を考えながら描くのがポイント。
4. トーン(明暗)をつける
光源の方向を決めて、全体に陰影をつけていきます。
暗い部分から順に塗り進め、面の“傾き”によって濃さを変えましょう。
一気に黒くせず、薄い層を何度も重ねることで、奥行きと空気感が出ます。
影をただ塗るのではなく、「光が当たっていない部分」として感じ取るのがコツです。
5. 質感を描写する
ここで、木・金属・布・肌などの“質”を描き込みます。
線を方向づけて描くと、表面の構造が見えてきます。
細部を描き込む前に、一度全体を見直してトーンバランスを整えましょう。
6. 光と影の調整・仕上げ
全体の明暗比を調整して、焦点を作ります。
強い光を当てたい部分には練りゴムでハイライトを。
柔らかい影はガーゼや擦筆でぼかします。
最後に、必要があればフィキサチーフを軽く吹きかけて完成です。
デッサンの魅力と学び
デッサンをしていると、
「なんとなく見ていたもの」が、
「構造と光の関係でできている」と気づきます。
描きながら、形を理解し、光の理屈を感じる。
それは“観察者から創造者へ”変わるプロセスです。
そして、これは絵画だけでなく、UIや空間デザイン、写真にも活かせるスキル。
たとえば、「影があると落ち着くボタン」や「立体感のあるレイアウト」など、
どれもデッサンで培う“見えない構造を理解する力”から生まれます。
まとめ
デッサンは、絵の練習というよりも“世界の再発見”です。
形・光・質感・空気・・・
そのすべてを感じ取り、紙の上で再構築すること。
上手い下手よりも、どれだけ観察したかが重要です。
描くことを通して、見えなかったものが見えるようになる。
それが、デッサンの一番の魅力だと思います。
みなさんにも、少しでもデッサンに興味を持っていただけたら嬉しいです。
今回はこの辺で!
最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。




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