
今回は、色の三属性のひとつ 「明度」 について。
色相・明度・彩度。
この3つは色を立体的に理解するための“設計図”のような存在ですが、
その中でも 明度は、最も目に入りやすく、印象を左右する強い要素 だと思っています。
ただ、明度って「明るさ」と言われても、
“なぜ印象が変わるのか”
“どう使えばデザインが良くなるのか”
といった部分は、案外深く考える機会が少ないんですよね。
ということで今回は、明度の仕組みから、その印象、実践での扱い方まで、
あなたと一緒にゆっくり整理してみたいと思います。
明度とは何か
明度(Value)は、色の「明るさ」を数値化したものです。
簡単に言えば、白に近いか、黒に近いか。
色相(色み)が違っても、明度だけを揃えれば“同じ明るさ”として認識できます。
ここでは、もう少し深掘りしていきます。
① 明度は「光の量」
明度は、色がどれだけ“光を反射しているか”に影響します。
-
白に近い → 光をたくさん返している
-
黒に近い → 光をほとんど返していない
つまり、明度は 光の量を視覚化したもの と言えます。
② 明度と彩度は影響し合う
彩度のときも触れましたが、
明度が変わると彩度の感じ方も変化します。
-
明度が低いと色は沈む
-
明度が高すぎても“白っぽさ”が勝ち、彩度が落ちる
-
中間の明度で最も彩度が高く見える
これを知っているだけで、
「思ったより色が派手に見えない…」
「淡くしたつもりがくすんでしまった…」
といった現象の理由が理解できます。
③ 無彩色は明度の基準になる
マンセルシステムでは、
-
完全な黒を 0
-
完全な白を 10
とし、その間を 1.0〜9.5 の等間隔で分割します。
| 値 | 色の状態 |
|---|---|
| 10 | 理想的な白(実在しない) |
| 9〜8 | とても明るい |
| 5 | 中間的なグレー |
| 2〜1 | とても暗い |
| 0 | 理想的な黒(実在しない) |
現実には 9.5〜1.0 が使用されます。
明度がつくる印象
明度は色の印象を決めるうえで最も強い要素のひとつです。
色相よりも彩度よりも、人間の視覚は「明るさ」を優先して捉えます。
ここでは 明度が変わると印象がどう変わるか をまとめます。
① 明度が高いときの印象(白に近い)
-
軽やか
-
爽やか
-
清潔
-
優しい
-
若々しい
-
柔らかい
雲、雪、光、花びら。
自然界の“やわらかくて綺麗なもの”は明度が高いことが多いです。
② 明度が低いときの印象(黒に近い)
-
重厚
-
静か
-
落ち着き
-
高級感
-
秘密めいた感じ
-
緊張感
黒い家具や夜景が“締まって見える”理由は、この明度の低さにあります。
デザインにおける明度の扱い方
明度を扱えるようになると、
作品の「空気感」や「重さ」をコントロールできるようになります。
ここでは、自分が実務で学んだ明度のコツをお話しします。
① 目線の導線を作る
人の目は 明るい → 暗い の順に動きます。
なので、明度は導線づくりにとても向いています。
-
ボタンを明るく → 視線が自然に集まる
-
補足情報は暗めに → 必要なときだけ読まれる
-
背景を少し暗く → 主役が浮き上がる
明度だけで視線を動かせるのは便利です。
② 落ち着きが欲しいときは「中明度」
派手すぎず、暗すぎず。
中間の明度は 安定と調和 を作ります。
インテリアやアパレルが“中明度の世界”で構成されることが多い理由もここです。
③ 明度差は “立体感” を生む
明度の差は、奥行きの差としても認識されます。
-
明るい → 手前
-
暗い → 奥
写真のレタッチ、UI、イラストの影づくり、
あらゆるところでこの法則が使われています。
マンセル表記(明度)のおさらい
明度はマンセル表記で 1〜9.5 の数値で示されます。
| 表記例 | 意味 |
|---|---|
| 7/ | 明度7 |
| 3/ | 明度3(かなり暗い) |
| N5 | 無彩色の明度5(グレー) |
明度は色相や彩度と合わせて使い、
例:5Y 8/12(Yの明度8・彩度12)
のように表します。
まとめ
明度は、色の見え方の“根っこ”をつくる要素です。
明るさを変えるだけで、
同じ色でもこんなに雰囲気が変わるのか、と驚くことがあります。
僕がデザインを学び始めた頃、
「色選びが難しい」と思っていた理由のひとつは、
明度を見れていなかったから でした。
明度は色の“性格”を決めるもの。
ぜひみなさんも、明度に少し意識を向けてみてください。
いつもの風景や作品の見え方が、すこし変わってくるかもしれません。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。
【参考】他の属性について
色相についてはこちらにまとめています。
彩度についてはこちらにまとめています。




記事へのコメント