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“シンプル”とは何か?――形・色・質感から読む“本当のシンプル”の仕組み

印象
この記事は約6分で読めます。

こんにちは、アツシです。

 

普段「シンプルでいいね」と気軽に言いますが、

いざ“シンプルとは何か?”と聞かれると、意外と難しいですよね。

 

線が少ないから?

色が少ないから?

装飾が控えめだから?

どれも“それっぽい”けれど、決定打ではない気がします。

 

僕自身、デザインの仕事を続ける中で、

シンプルという言葉に何度も向きあってきました。

 

そして観察してみると、そこには“共通する特徴”があるように感じます。



今回はその特徴を、形・質感・色という3つの視点から丁寧に見つめてみたいと思います。

 

どうぞよろしくお願いします。

 

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形がつくる「シンプルさ」

シンプルに見える形には、どうやらいくつかの“条件”があります。

 

① ひと言でたとえられる形

丸、四角、三角。

このあたりの形は、見た瞬間に名前が浮かびますよね。

 

これはつまり、

判断に迷わない形 だということです。

 

逆に、ジグザグしていたり出っ張りやへこみが多い形は、認識に少し時間がかかります。



この“ちょっとした迷い”が、シンプルから遠ざかる原因なんだと思います。

 

人は“よくわからないもの”に軽い不安を感じやすいと言われています。



シンプルな形が安心して見えるのは、その逆だからかもしれません。

 

② 線が少なく、情報が少ない

シルエットが最小限の線で表せる形は、視覚情報の量が少なく落ち着いて見えます。

 

線が増えるほど視点が散り、

「どこを見ればいいの?」という迷いが生まれます。

 

それが何かを理解するのに頭を悩ます必要がない、というのはやっぱり人間にとって思っている以上に重要なんでしょうね。

 

線が少ない形は、“静かさ”を持っている、と言えるのではないでしょうか。

 

③ “面”が広くまとまりがある

個人的にずっと感じていることですが、

1cm角の三角錐のように“角”が集中した形は、不思議とシンプルに見えづらいです。

 

逆に、広い面がひとつどんと構えている形は、安心して眺められる感覚があります。

 

“面の広さ”は、形に落ち着きを与えてくれるんだと思います。

 

質感がつくる「シンプルさ」

質感も、見た目の印象にかなり影響します。

 

① 材質が統一されている

金属・木材・樹脂・布…

素材が増えるほど情報が増え、複雑さが増します。

 

一方で、ひとつの材質でまとめられたものは統一感が高く、

目が迷いません。

 

素材の統一は、シンプルの大きな鍵だと思います。

 

② 光の反射が暴れていない

僕たち人間はどうしても光を目で追ってしまう傾向があって、

例えば視界の端できらりとした時は咄嗟に目を向けてしまうと思います。

 

ギラついた反射や強いハイライトは、刺激が強く“ざわつき”を生みます。

 

こうした特徴は、シンプルとは離れてしまうと考えています。

 

反対に、マットな表面や控えめな光沢は、情報を落ち着かせてくれます。



光が静かに収まっている面は、それだけでシンプルに見えます。

 

色がつくる「シンプルさ」

色も強力な要素です。

ここでは、シンプルさを実現する色とは何なのか、まとめてたいと思います。

 

① 色数が少ない

1色でまとまったものは、それだけで迷いがありません。

 

複数色であっても、

「ベースは白で、ちょっと黒が入ってる」

くらいの関係だと、秩序がありシンプルに感じられます。

 

② 素材の色に近い、自然な色

ナチュラルな木、白い陶器、黒い金属。



“素材のままっぽい色”は視覚がゆっくり休める色です。

 

逆に人工的すぎる鮮やかな色は、強い主張になりやすく、

シンプルから少し離れて見えます。

 

人の目って、びっくりするほどの精度で違和感に気づいてしまうものですもんね。

 

シンプルの本質

ここまで形・色・質感を見てきて、

改めて思うのは、

シンプル=ひと言(に近い言葉)で説明できる状態

ということです。

 

・形 → 「丸い」

・質感 → 「マット」

・色 → 「白い」

これらはどれも“理解に時間がかからない要素”です。

 

理解の速さは、直感の気持ちよさにつながります。



そして、その気持ちよさは“安心”に直結します。

 

逆に、

形も質感も色も複雑で“なんだかよくわからない”ものは、

どんなに高価でも人は本能的に距離を置いてしまいます。

 

また、それは、「迷いがない状態」とも言い換えられると思います。

 

迷いがなければ判断が速く、

判断が速ければ安心できます。

 

安心できるから、すっきりして見える。

これが、シンプルという存在が持つ心地よさなのかもしれません。

 

単に“余計なものがない”だけではなく、

認識の負担が少ない という点こそが、シンプルの本質だと思います。

 

シンプルは“ベスト”なのか?

「Simple is best」という言葉をよく耳にしますが、

僕は“いつもベストとは限らないけど、すごく強い選択肢”だと思っています。

 

この理由は三つあります。

 

わかりやすい

見てすぐ理解できるため、安心感がある。

 

使いやすい

構造が複雑でないため、壊れにくくメンテナンスも楽。

 

生活の邪魔をしにくい

情報量が少ないため、空間にしてもプロダクトにしても馴染みやすい。

 

まとめ

シンプルとは、要素を削ることではなく、

“人が迷わず理解できる状態”を指すのだと思います。

 

・形のわかりやすさ

・質感の静けさ

・色の落ち着き

 

これらが重なって初めて、

安心できる「シンプル」が生まれます。

 

僕自身、ものづくりの現場にいると、

“美しい複雑さ”に惹かれることもあります。



でも同時に、シンプルが持つ深い魅力にもますます惹かれています。

 

皆さんも、身の回りの“シンプル”をぜひ観察してみてくださいね。



きっと、今まで見えていなかった魅力があるはずです。

 

今日も読んでくださってありがとうございました。

またお会いしましょう。

 

【参考】本文で触れた概念に関連する専門用語

本文で説明した内容 関連する専門用語 意味
“ひと言でわかる形” ゲシュタルト心理学(単純性の原理) 人は複雑な形を単純化して認識する傾向がある
材質の統一 統一の原則 同じ特徴を持つものはまとまりとして知覚される
情報量が少ないほど落ち着く 情報量(Information Load) 認知に必要な情報が少ないほど負担が減る
光が暴れていない質感 マットフィニッシュ 反射を抑えた落ち着いた表面仕上げ
色数が少ない配色 モノクロマティック配色 同系色でまとめる統一的な配色

 

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アツシ

理工系の学部を卒業し、メーカーの生産技術職を経てデザインの道に進み、工業デザインとUI・UXデザインを経験しました。僕と同じような人がデザイナーやクリエイターを目指したり制作活動をすることの力になりたいと思っています。

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